1996 年 9 巻 p. 15-21
記憶障害をはじめとする重度の高次脳機能障害をもつ脳外傷者を対象に, 課題分析を用いて17工程のレゴ・ブロックの組み立て作業を行った。完成見本だけを手がかりにした練習では7日間で完成品を1個も作れなかったが, 課題分析を用いて, 常に同じ手順, 同じ言葉での指示を繰り返し, すべての項目について職員が先に指示を出す手続きを5日間, 対象者が先ず単独で組み立てて間違えが生じた時のみ修正する手続きを17日間行ったところ, 正反応率は90%以上を維持できるようになった。しかし, 特定の数工程については誤った手順が繰り返し出現して修正することができなかった。手順を問題にしなければ, ほとんどの試行で単独で完成品を作れるようになり, おおむね作業自立は達成された。事例を通して, 特に記憶障害をもつ人を対象にした場合の課題分析の有用性, 実践上の反省点, 留意点などについて考察した。