抄録
地域障害者職業センターが実際の事業所で行う「職域開発援助事業」は成果を上げているが, 同様の趣旨で, 精神薄弱授産施設が行った「JOB訓練」の9事例から, 重度知的障害者や職業的重度者の一般就職を進める上での問題点の改善, すなわち能力開発を支援との関連で検討した。全般的にいって, 訓練前の施設内の作業活動に対しては意識や意欲が乏しいという問題点があったが, 多くの者に改善が見られる。さらに作業態度や作業技術に改善が見られる者もいるが, こだわりや不安感があり, 依存性が強い2名は精神的安定を欠き, ほとんど改善は見られなかった。この結果から, クライエント自身が就職希望や意思を持つことが就職に移行する第一要件であること, 本人の状況と職場環境とのマッチングが自信と精神的安定をもたらし, 作業態度や作業技術の改善をもたらすこと, 精神障害を合併する者には段階的, 長期的対応が必要なことを考察した。また, 授産施設が「JOB訓練」を行う意義について言及した。