日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
血行再建術後グラフト感染症の検討
石橋 宏之太田 敬杉本 郁夫高橋 正行川西 順山田 哲也
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2006 年 15 巻 3 号 p. 373-378

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抄録

過去21年間に血行再建術後のグラフト感染症を31例経験した. 原疾患は, 閉塞性動脈硬化症18例, 腹部大動脈瘤7例, 胸部大動脈瘤3例などであり, グラフト移植部位は, 胸部大動脈3例, 腹部大動脈13例, 大動脈以外の動脈15例であった. 胸部大動脈グラフト感染は3例であったが, すべて緊急手術例であり, 2例は人工血管置換術, 1例はステントグラフト内挿術 (腹部大動脈瘤と同時手術) であった. 肋間筋弁移植を行った1例は救命しえたが, 保存療法を行った2例は救命できなかった. 腹部大動脈グラフト感染は13例であった. 大動脈-腸管瘻を合併した5例では, グラフト全摘出3例, 亜全摘1例, 脚摘出1例を行った. 5例中2例で大動脈-腸管瘻が再発し, 救命4例, 死亡1例であった. 大動脈-腸管瘻非合併の8例では, グラフト摘出・非解剖的再建6例, 筋弁移植, 大網移植各1例を施行し, 救命6例, 死亡2例であった. 大動脈以外のグラフト感染15例では, 感染グラフト摘出・血行再建あり5例 (救肢救命3例, 死亡2例), 感染グラフト摘出・再建なし6例 (救肢救命3例, 肢切断1例, 死亡2例), 感染グラフト非摘出4例 (肢切断3例, 死亡1例) であった. グラフト感染症の治療において, 感染の広がり, 宿主の状態を考慮して治療を行ったが, 救命のためには, 感染グラフトの完全除去と感染組織の広範囲デブリードマンが重要であった.

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