2006 年 15 巻 5 号 p. 517-519
頸部動脈瘤の中でも下甲状腺動脈瘤は稀である. 症例は52歳, 男性で, 左頸部の腫脹と左肩の運動麻痺を主訴に来院した. CTで左頸部に6.5×4.5cm大の拍動性腫瘤があり, 3D-CTで下甲状腺動脈瘤と診断した. 手術は動脈瘤の流入・流出血管を剥離・結紮後瘤を切開し, 内部の壁在血栓を除去, 瘤の余剰部分を切除, 縫縮術を行った. 組織学的には弾性板の不明瞭な血管壁で, 壁内に膠原線維の増生と硝子化があり, 動脈硬化性の真性瘤と診断した. 術前の三角筋の筋力低下も改善し, CT上も残存瘤はなく順調に経過した. 頸部の拍動性腫瘤の鑑別において, 下甲状腺動脈瘤は頻度は少ないが考慮すべき疾患の一つである.