日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
膝窩動脈瘤手術症例の検討
中村 浩志井上 芳徳栗原 伸久地引 政利菅野 範英岩井 武尚
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2006 年 15 巻 7 号 p. 597-602

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抄録

膝窩動脈瘤は末梢動脈瘤の約8割を占め, 両側性や他の動脈瘤を併存することが多い. そのほとんどが変性による真性動脈瘤であり, 症候性が半数以上を占めるが, 大きさなどによる手術適応が確立されていないのが現状である. 今回当科にて手術を施行した膝窩動脈瘤症例18例20肢を対象として検討した. 年齢は12~78歳 (平均52歳, 30歳以下の若年者 : 3例) で男女比は14 : 4, 側性は左右同数であった. 他の動脈瘤を同時に併存した症例は2例で, 腹部大動脈瘤が1例, 腹部大動脈瘤と同側大腿動脈瘤が1例であった. 両側性は2例であり, 瘤径は1.6~5.5cm (平均4.3cm) であった. 無症候性は両側性の症例のみで, 反対側の症状で受診した際に造影computed tomography (CT) にて診断した. その他の症例は有症候性であった. 診断には触診とエコー検査もしくは造影CTが有用であった. 術式は原則として瘤切除, グラフト置換術 (対側の大伏在静脈を使用) としたが, 遠位側吻合部が膝上であれば人工血管を用いた. 外径1.6cmで閉塞をきたした症例もあり, 壊死の進行から大切断に至った症例もみられた. 径の小さい動脈瘤でも急性閉塞をきたす症例があり, また遠隔期の手術成績も良好であることから発見段階での手術が望ましいと言える.

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