日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部大動脈瘤手術後の早期全粥食開始
開腹法と後腹膜経路法の比較検討
松下 昌裕池澤 輝男坂野 比呂志
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 16 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

【背景】最近は開腹手術後早期から経口摂取が可能という報告が多い.腹部大動脈瘤手術後早期から食事を開始できるか否か検討するとともに,開腹法と後腹膜経路法を比較検討した.【方法】2004年までの 3 年間の待機的腹部大動脈瘤手術例121例のうち,手術後 2 日あるいは 3 日目から全粥食を開始した108例を対象とした.開腹法90例,後腹膜経路法18例である.年齢,性別,食事開始日(開腹法2.5 ± 0.5日,後腹膜経路法2.4 ± 0.5日),手術時間,出血量は両群間に有意差はなかった.手術後の食事摂取量の変化を 6 型に分類し,第 5 病日には50%以上摂取可能である 3 つの型を食欲良好型,第 5 病日以後も50%摂取できない 3 つの型を食欲不良型と大別した.Retrospective studyを行った.【結果】開腹法は食欲良好型50例(56%),食欲不良型40例(44%),後腹膜経路法は食欲良好型13例(72%),食欲不良型 5 例(28%)で有意差はなかった.50%摂取可能となった日は開腹法3.4 ± 2.4日,後腹膜経路法2.8 ± 0.8日で有意差はなかった.嘔吐は開腹法 6 例(7%),後腹膜経路法 0 例で有意差はなく,胃管再挿入例はなかった.開腹法例のうち食欲良好型を食欲不良型と比較すると,年齢,性別,食事開始日,人工血管形,動脈瘤径,手術時間,出血量,心肺腎機能に有意差はなかった.【結論】開腹法でも多くの例で腹部大動脈瘤手術後早期から食事摂取は可能であり,食事摂取に関しては後腹膜経路法の利点はそれほど大きくないものと思われた.開腹法手術例のうち,当初経口摂取が不良である例の特徴を手術前,手術中所見から指摘することはできなかった.

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