2007 年 16 巻 5 号 p. 679-683
症例は73歳, 男性. 突然の腹痛を主訴に当院を受診した. 腹部CTにて腹部大動脈瘤を認め, 瘤壁は前側壁を中心に肥厚していた. 炎症性腹部大動脈瘤と診断し, 切迫破裂を疑い, 緊急で全身麻酔下にステントグラフト内挿術を施行した. 術後経過は良好で第 9 病日に退院した. 術後18カ月目の腹部CTで瘤径と瘤壁の肥厚はともに縮小していた. 炎症性腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術では動脈周囲の剥離操作を必要としないため, 術中の出血や周囲臓器の損傷などの問題を回避できる. また, 動脈瘤の縮小のみならず, 周囲の線維性肥厚に対する縮小効果も期待し得る治療法である.