2007 年 16 巻 6 号 p. 725-733
腎動脈分岐部より中枢側におよぶステントグラフトを用いて治療した傍腎動脈腹部大動脈瘤(以下juxtarenal AAA)を対象に初期および中期治療成績の評価を行った.対象は外科的手術の非適応例で,かつ従来のステントグラフトによる治療が解剖学的に適応外となるプロキシマルネックを有する症例である.FenestrationはCTをもとに腹部動脈分枝の解剖にあわせて作成し,ステントグラフト留置後に,分枝動脈の起始部にステントを留置した.362本の腹部分枝を含んだ139例に対し治療を行い,1 例を除く全例で腹部分枝の再建とステントグラフト挿入に成功した.平均観察期間は21カ月(0~55カ月)であった.30日以内に死亡した症例が 2 例で認められた.退院前CTではタイプ I エンドリークが 4 例,タイプIIIエンドリークが 3 例で認められたが,1 カ月後のCTではタイプ I エンドリークやタイプIIIエンドリークは認められなかった.瘤径の縮小は 6 カ月,12カ月,24カ月で,各々54%,80%,79%で認められた.血清クレアチニン値の上昇は18例で認められ,このうち 5 例で人工透析が必要となった.再建が予定された362本の腹部分枝のうち,腎動脈狭窄が11 本,腎動脈閉塞が 8 本および上腸間膜動脈狭窄が 1 本で認められた.Fenestratedステントグラフトを用いた血管内治療は,腹部分枝が狭窄する危険性があるため,腹部分枝の血流を慎重に経過観察する必要があるが,juxtarenal AAAに対するfenestratedステントグラフトを用いた血管内治療により良好な中期成績が得られ,本法は有効な治療法となりえることが示唆された.