2007 年 16 巻 7 号 p. 819-822
症例は86歳の男性.便通異常で近医を受診し,腹部超音波検査で下腹部腫瘤を指摘され当院に紹介された.CTで両側内腸骨動脈瘤(右4.5cm,左 5cm)を認め,右内腸骨動脈瘤から連続する径 6cmの,のう胞性腫瘤により直腸が圧排されていた.入院後下血があり,内腸骨動脈瘤直腸瘻の疑いで緊急手術を行った.Y型人工血管置換術,endoaneurys- morraphy(瘤内縫縮術),Hartmann手術を行い術後経過は良好であった.病理検査では右内腸骨動脈瘤破裂,直腸壁への穿通と粘膜の虚血性変化を認めた.一次性大動脈腸管瘻におけるherald bleeding(前駆出血)の機序として虚血に陥った粘膜からの出血が考えられた.