日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
重症虚血肢に対する血行再建術における皮膚灌流圧測定の意義
辻 義彦北野 育郎辻 依子寺師 浩人司尾 和紀
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 17 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

【目的】重症虚血肢に対する血行再建術前後の皮膚灌流圧測定の意義を評価する.【対象と方法】最近 3 年間に創傷治療センターを受診した399例中205例(51.4%)が下肢閉塞性動脈疾患による虚血性潰瘍と評価された.このうち血管外科手術が選択された44例(男性34例,女性10例,平均71.4歳)を対象とした.全例に鼠径靭帯下の血管外科手術(総大腿動脈血栓内膜摘除術 1 例,大腿—膝上膝窩動脈バイパス術12例,大腿—膝下膝窩動脈バイパス術12例,脛腓骨動脈へのバイパス手術19例)が施行され,さらに併存する腸骨動脈病変に対し 5 例に,バイパス手術が 9 例に血管内治療が追加された.手術前後に皮膚灌流圧(skin perfusion pressure; SPP)を用いて局所血流を評価した.【結果】膝上,膝下膝窩動脈へのバイパス開存率はそれぞれ100%,91.7%であった.脛腓骨動脈へのバイパスでは 6 例の初期閉塞と 2 例の早期閉塞を認め,一次開存率57.9%,二次開存率68.4%であった.SPP値は術前21.1 ± 10.8mmHgから術後60.4 ± 26.1mmHgに上昇し(p < 0.01),早期死亡と転院を除く41例中35例(85.4%)で下肢救済できた.44例中 1 例が術後早期に心筋梗塞で死亡,12例が退院後死亡し,1 年生存率75.0%,3 年生存率53.0%であった.【結論】重症虚血肢に対するバイパス手術成績はほぼ満足できたが,その生命予後は不良で,動脈硬化性疾患に対する全身管理が肝要と思われた.またSPPは術前後の局所血流をよく反映し,40mmHg以上あれば良好な創傷治癒機転の働くことが確認された.

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