2008 年 17 巻 3 号 p. 467-470
症例は,62歳女性で,腹痛の精査中に,最大径19mmの下膵十二指腸動脈瘤と下膵十二指腸動脈後枝にも瘤状の拡大が認められ,さらに腹腔動脈にも高度狭窄が認められた.本症例では,腹腔動脈の高度狭窄のため,下膵十二指腸動脈が側副血行路として発達したことが,下膵十二指腸動脈の動脈瘤と後枝の動脈拡張の要因と考えられる.術中術後の血流障害のリスクを回避するためと,術後遠隔期の側副血行路の発達をおさえるために,大動脈総肝動脈バイパス術を行ったうえで,下膵十二指腸動脈瘤と拡張した後枝の切除を行った.術後経過は順調で,術後の血管造影検査では,上・下膵十二指腸動脈の拡張は消失していた.腹腔動脈の高度狭窄を伴った下膵十二指腸動脈瘤に対し,動脈瘤切除と腹部大動脈総肝動脈バイパス術と下膵十二指腸動脈瘤切除とを行う方法は,周術期の臓器虚血を回避し,下膵十二指腸動脈瘤の再発を防止する有用な方法と考える