日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
鼠径部 1 カ所開創による膝下までの大伏在静脈ストリッピング
波多野 稔新見 正則堀口 定昭小池 洋介河原 真理河野 道貴白土 裕之白杉 望宮澤 幸久
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2008 年 17 巻 5 号 p. 551-556

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抄録

【はじめに】これまでの大伏在静脈のストリッピングは鼠径部および下腿の 2 カ所の創を必要とした.今回われわれは鼠径部 1 カ所の創で膝下までの大伏在静脈のストリッピングが可能なストリッパー:InvisiGrip(LeMaitre Vascular, Inc., Germany)を使用する機会を得たので,その使用経験を報告する.InvisiGripは内翻式ストリッパーの一種で,その特徴は,鼠径部 1 カ所の創で膝下までの大伏在静脈を抜去することができる.また,ストリッピング後の血腫が少ないとされている.【対象と方法】今回このInvisiGripを使用した症例34人44肢を対象とし検討を行った.男性 6 人 7 肢,女性28人37肢,平均年齢は58歳,また,左下肢24肢,右下肢20肢という内容であった.また,CEAP分類ではC2:39肢(88%),C3:2 肢(5%),C4:2 肢(5%),C5:1 肢(2%)であった.【手術手技】鼠径部に皮膚切開をおき大伏在静脈を露出,大腿静脈までの合流部まで剥離を行い大伏在静脈の高位結紮を行った後,InvisiGripを同部より挿入し膝下までの大伏在静脈のストリッピングを行った.適宜,局所静脈瘤の切除を追加した.【結果】術前の抗凝固剤の内服は心疾患のためワーファリン内服中のものが 1 名であった.InvisiGripを用いて膝下までの大伏在静脈の抜去は全例可能であった.大伏在静脈の抜去の様式は内翻型31肢・通常型13肢であり,回数は 1 回で抜去できたもの29肢・2 回行ったもの10肢・3 回行ったもの 5 肢であった.また,手術手技に関してはBMIとの相関は認めなかった.大伏在静脈抜去後の出血はほとんどみられなかった.術後 1 週間目での血腫の形成を 8 肢に認めたがいずれも 1 カ月後には消退していた.また,その他の合併症の発生はみていない.【結語】InvisiGripを用いたストリッピングは膝下までの大伏在静脈抜去に関しては問題なく行うことができた.また,術後の重篤な合併症の発生も認めなかった.(日血外会誌 17:551–556,2008)

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