日本血管外科学会雑誌
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症例
受傷後50年経過して発見された外傷性膝窩動静脈瘻の 1 例
大堀 俊介伊藤 寿朗稲岡 正己
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2008 年 17 巻 6 号 p. 631-634

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抄録

症例は73歳男性で左下肢腫脹を主訴に来院.左膝窩部にthrill,拍動性腫瘤を触知した.造影CT検査,下肢動脈造影検査で,動静脈が大動脈分岐部から左膝窩部まで広範囲にわたり拡張,蛇行し,膝下部で動静脈瘻が認められた.膝窩動静脈瘻の診断のもとに瘻閉鎖術を施行した.手術は腹臥位で,膝下部を切開.動静脈を瘻の中枢,末梢でそれぞれ遮断後,拡張した静脈を縦切開し,約 5mmの瘻孔を 5-0 polypropylene糸で単純閉鎖した.本症例の原因は,20歳時に木刀で左膝窩部を強打され,著明に腫脹し入院したという既往があり,他に同部位に手術歴,外傷歴がないことから,このときの膝窩動脈の損傷が原因で近接している静脈と瘻孔を形成し,長い経過でこのような動静脈の変化をきたしたものと考えられた.文献上調べ得る限りでは,受傷後50年を経過してこのような形態の動静脈瘻を形成した症例はなかった.

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