日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
胸部下行大動脈瘤ステントグラフト治療後に 腹部大動脈瘤血栓閉塞をきたした 1 例
澤田 健太郎田中 厚寿鬼塚 誠二廣松 伸一明石 英俊青柳 成明
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 17 巻 7 号 p. 663-667

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抄録

症例は82歳,女性で,ASOに対する両下肢バイパス手術歴があり,小瘤径の腹部大動脈瘤を合併した胸部下行大動脈瘤切迫破裂に対してステントグラフト内挿術を施行した.胸部ステントグラフト内挿術後に腹部大動脈瘤の壁在血栓剥離による腹部大動脈瘤血栓閉塞をきたし,緊急に腹部大動脈置換術と下肢グラフト内血栓除去を行った.下肢の運動機能は緊急手術の直前まで保たれていたが,緊急手術後に膀胱直腸障害と第11胸髄レベル以下の不全対麻痺を発症した.高圧酸素治療(HBO)と理学療法により膀胱直腸障害は消失し独歩退院となった.今回の不全対麻痺発症は胸部ステントグラフト内挿術後に腰動脈が脊髄への側副血行になっていた可能性があり,腹部大動脈置換術時の腰動脈閉鎖が脊髄虚血に影響を及ぼしたのではないかと考えられた.

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