日本血管外科学会雑誌
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Print ISSN : 0918-6778
症例
外傷性大動脈破裂 2 症例の経験と本邦における治療成績の検討
本田 二郎与那覇 俊美黒木 慶一郎和田 秀一山本 晋
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2009 年 18 巻 1 号 p. 21-25

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抄録

【背景】外傷性胸部大動脈破裂(traumatic aortic rupture; TAR)の 2 例を提示するとともに,本邦での治療報告例につき,その臨床的特徴,手術方法と成績を検討し考察を加えた.【症例】症例 1 は34歳男性で交通事故で受傷したが受傷時には診断されず,4 日後にショック状態となり救急搬送された.大動脈峡部のTARと診断され緊急手術となった.症例 2 は65歳の男性で交通事故で受傷した大動脈峡部のTARである.受傷後約10時間で手術が行われた.いずれの症例も左心バイパス下に下行置換術を行い良好な結果を得た.文献上検索し得た本邦でのTAR手術報告例に自験例を加えた162例を比較検討した.【結果】破裂部位は大動脈峡部121例,下行11例,弓部12例,上行 3 例,峡部 + 弓部 1 例,胸腹部移行部 1 例,不明13例であった.術式は外科的修復142例,ステントグラフト20例.手術死亡は外科的修復 9 例(6.3%),ステントグラフト 2 例(10%)であった.受傷後緊急でTAR手術を優先して行ったものは75例で手術死亡 9 例(12.0%)であった.一方他の処置や治療を先行させ,緊急あるいは待機して手術を行った54例の成績は良好で,手術死亡 1 例(1.9%)であった.急性期症例の手術死亡のうち40%は脳合併症であった.初期の報告では受傷時に診断されず慢性期手術となった例が多く(30例),その成績は良好であった(手術死亡 1 例,3.3%).【結語】TARは脳を始めとした重篤な他臓器障害が存在しないか,またはそれらの治療が先行可能な状態であれば救命率は良好であった.ステントグラフトに関しては今後の症例の蓄積が待たれる.

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