日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
第36回日本血管外科学会総会の新たな挑戦 ─総会記録集(司会者のまとめ)とコンセンサス─
川崎 富夫小山 信彌
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2009 年 18 巻 3 号 p. 425-430

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抄録

【はじめに】平成20年 4 月に開催された第36回日本血管外科学会総会の記録集(CD-ROM版)が会員に郵送された.この記録集には新しい試みとして「司会者のまとめ」が記載された.会長の根岸七雄教授がなされたこの新しい試みについて,メッセージ論の立場から検討した.【方法】第36回日本血管外科学会学術総会(抄録集)のシンポジウム 5 「再生医療・遺伝子治療の成績と問題点」を対象に,対象疾患,治療法,治療結果,医学的な安全性・有効性・問題点に分けてまとめ,それを記録集(CD-ROM版)の内容と比較検討した.【結果】シンポジウムの検討結果にあらわれた内容は,抄録集の内容と大きく異なっていた.学会記録集の「司会者のまとめ」の内容には,演者間での内容の比較を通じて会員の理解が進むように検討が進み,演者の結論間に存在する相違点については共通の理解ができるような概念形成を促す方向に向かうという特徴がみられた.さらに,医療倫理や社会的使命に結びつく内容が取り上げられるという特徴もみられた.【結論】記録集における「司会者のまとめ」は,単に学会総会の記録を残すという行為にとどまらない.困難なコンセンサス形成に向かう努力を記録し,透明性を高めて社会への説明責任を果たし,また,医療訴訟に関わる医療の限界を司法に示すうえで,非常に有用である.社会や司法に対して,医学の偽らざる現実問題をその苦悩として示す一つの手段として重要である.

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