日本血管外科学会雑誌
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症例
胸部大動脈瘤破裂に対し準緊急的にステントグラフト内挿術を施行し救命しえた 1 例
西本 昌義柚木 知之福本 仁志秋元 寛
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2009 年 18 巻 3 号 p. 463-467

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抄録

【背景】胸部大動脈瘤に対するステントグラフト留置術はその臨床応用例が報告されて以来,本邦においても急速に普及しつつある.今回われわれは,胸部大動脈瘤破裂の患者に対し準緊急的にステントグラフト内挿術を施行し救命しえた 1 例を経験したので報告する.【症例】症例は64歳,男性.夕食中に突然の胸背部痛と呼吸困難を生じ,当センターへ救急搬送となった.搬入時,意識レベル清,血圧124 / 60mmHg,脈拍100回 / 分,眼瞼結膜は蒼白であった.胸腹部造影CTで左胸腔内に大量の液体貯留を認め,Th6~10にかけて最大径 8cmの動脈瘤を認めたことから,胸部大動脈瘤破裂と診断した.Landing zoneが十分とれることからステントグラフト内挿術可能と判断したが,適切なサイズのステントグラフトを用意するため全身麻酔による厳重な血圧管理下に翌朝まで待機した.手術は右大腿動脈をカットダウンし,Dacron covered Z stentを留置した.術翌日のCTで瘤内血栓化は良好であった.【結果】気管切開を必要としたが,術後24日目に独歩退院となった.現在で約 1 年 6 カ月の観察をしているが瘤は消退している.【結論】胸部大動脈領域の緊急手術はいまだ成績不良であり,本症例のような破裂症例に対して準緊急的にステントグラフト内挿術を行えたことは有用であったと考えられる.

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