日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部大動脈瘤に対するEVAR:日本における適応と限界 ─Zenith AAAステントグラフト適応基準からの検討
北川 敦士大北 裕岡田 健次長谷川 智巳南 一司松森 正術宗像 宏野村 佳克山口 雅人杉本 幸司
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2009 年 18 巻 6 号 p. 595-602

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抄録

【目的】日本人の腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(EVAR)の適応と限界についてZenith AAAステントグラフトの適応基準に従い検討した.【方法】2006年 1 月から2007年12月の間,当科で評価した腹部大動脈瘤(AAA)125人のうち,CT評価可能であった106人(男性88人,平均年齢73歳)を対象とした.マルチスライスCTスキャンを用い,以下について計測,解析を行った.1)腹部大動脈瘤最大短径,2)Proximal neck外径,長,3)総腸骨動脈外径,長,4)Proximal neckの腎動脈上方大動脈に対する角度,大動脈瘤長軸に対する角度,5)外腸骨動脈径,6)低位腎動脈から大動脈分岐部までの腹部大動脈長.【結果】EVAR可能症例27例(25.5%),除外症例79例(74.5%)であった.男女別EVAR適応率は男性29.5%(26 / 88例),女性5.6%(1 / 18例)であり,女性でよりEVAR除外例が多かった(P = 0.04).おもな除外理由は,short proximal neck 32例(40.5%),腸骨動脈狭小24例(30.4%),腎動脈下proximal neck高度屈曲23例(29.1%)であった.【結論】文献上,欧米人のEVAR適応率は48~66%と報告されているが,日本人においてZenith AAAステントグラフトの適応基準を順守すると,short proximal neck,腸骨動脈狭小,proximal neck高度屈曲等の問題から,とくに女性においてEVARの適応は限界があると言わざるを得ない.

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