日本血管外科学会雑誌
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Print ISSN : 0918-6778
症例
弓状靭帯による腹腔動脈圧迫狭窄を伴う下膵十二指腸動脈瘤の1手術例
野村 真治白澤 文吾森景 則保古谷 彰吉村 耕一濱野 公一
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2009 年 18 巻 6 号 p. 615-618

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抄録

症例は43歳男性.尿路結石の精査目的で行われたCTで下膵十二指腸動脈瘤と弓状靭帯による腹腔動脈起始部圧迫症候群(celiac axis compression syndrome; CACS)を指摘された.血管造影検査で,下膵十二指腸動脈が側副血行路として発達し,腹腔動脈領域を灌流していた.本疾患に対しての手術では,周術期の腹腔内臓器虚血を回避する必要がある.われわれは(1)弓状靭帯の切離による腹腔動脈の圧迫解除の後に,(2)下膵十二指腸動脈を試験遮断し,腹腔動脈の血流が維持されていることを確認し,(3)瘤切除を行い,良好な経過を得ることができた.下膵十二指腸動脈瘤は稀な疾患ではあるが,CACSを合併することが少なくない.そのような場合には本症例のように,膵十二指腸動脈が腹腔動脈への重要な側副血行路であるため,瘤切除を行う際,周術期の腹腔内臓器虚血を回避すべく,慎重に治療戦略を組み立てる必要がある.

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