2010 年 19 巻 1 号 p. 23-27
胸部大動脈人工血管置換術後に発症したMRSA縦隔洞炎に対するVAC療法の1症例を経験した.胸部大動脈人工血管置換術後の縦隔洞炎症例では,心臓手術後症例と異なり,容易に人工血管感染を伴うこと,また,頸部3分枝付人工血管で置換する全弓部置換術後の場合には末梢側吻合部付近の奥深くまで縦隔洞スペースが形成され,かつ,頸部3分枝への分枝人工血管で縦隔洞スペースが区分化され十分なドレナージが困難となり,一層治療に難渋する.チューブを用いて縦隔洞奥のスペースまで十分な洗浄を行い,ペンローズドレーンを人工血管末梢側吻合部に挿入して十分なドレナージをはかるという工夫を加え良好な結果を得た.