2010 年 19 巻 4 号 p. 565-568
症例は61歳男性.他院にて左肩関節前方脱臼に対し,徒手整復を受けた.その後,とくに問題なく経過していたが,受傷約2週間後に左肩関節,腋窩周囲の腫脹および疼痛が出現したため他院に入院した.関節,骨の異常は認められなかったため,保存的に経過観察されていたが,同部位の腫脹,疼痛は徐々に増悪した.入院約2週間後に造影CT検査が施行され,腋窩動脈に接した仮性動脈瘤が認められたため,当院へ搬送となった.手術は,腋窩動脈損傷部を人工血管で置換し,血腫除去を行った.術前からの左腕神経叢不全麻痺は,術後も残存した.肩関節脱臼整復後には,まれではあるが血管損傷の合併症もあり,さらに本症例のように緩徐な経過をとる,腋窩動脈仮性動脈瘤もあることに留意する必要がある.