2010 年 19 巻 4 号 p. 579-582
後方アプローチによる膝窩動脈-後脛骨動脈バイパスを行ったベーチェット病膝窩動脈仮性瘤の1手術例を経験した.症例は28歳の男性で4年前に不全型ベーチェット病と診断された.2カ月前に突然,左膝窩部の腫脹と疼痛を認めた.CTで前脛骨動脈分岐部の膝窩動脈腹側に壁在血栓を伴う巨大な嚢状瘤を認め,膝窩動脈および脛骨腓骨動脈幹は瘤により背側に圧排されていた.手術は膝窩動脈および脛骨腓骨動脈幹が直視できる後方アプローチでそれぞれを結紮し,同一体位で膝関節部膝窩動脈から下腿下1/3の後脛骨動脈に大伏在静脈でバイパスをおいた.後方アプローチによる後脛骨動脈バイパスが必要となる頻度は低いが,本例では膝窩部動脈と脛骨腓骨動脈幹の処理が必須であったことと中枢側吻合血管として膝窩動脈を使用したことから本法は有用であった.