日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
下肢深部静脈血栓症,急性腎不全を初発症状とした総腸骨動脈瘤の1例
出雲 明彦内田 孝之安藤 廣美安恒 亨田中 二郎鮎川 勝彦
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キーワード: 腸骨動脈瘤, 動静脈瘻
ジャーナル オープンアクセス

2010 年 19 巻 4 号 p. 583-587

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抄録

腹部大動脈瘤や腸骨動脈瘤が動静脈瘻を合併する病態は稀で,その瘻孔の大きさに伴う短絡量により臨床症状は多彩である.今回,左下肢深部静脈血栓症,急性腎不全にて発症した動静脈瘻を伴う右総腸骨動脈瘤の1例を経験したので報告する.85歳,女性.嘔吐,気分不良ありで近医受診したところ,乏尿,腎機能悪化を認め,腎尿路系の感染症を疑われ入院となった.入院中に左下肢の疼痛,腫脹が出現し当院紹介となった.精査にて動静脈瘻を伴う右総腸骨動脈瘤と診断し,緊急手術となった.手術は,動脈瘤切除+人工血管置換術と瘻孔閉鎖を施行した.術直後より腎機能は回復した.術後12日目より深部静脈血栓症に対して抗凝固治療を行い,術後52日目に退院となった.深部静脈血栓症,急性腎不全で発症した動静脈瘻を伴う右腸骨動脈瘤を経験した.特異な症状で発症するため,腹部大動脈瘤,腸骨動脈瘤をもつ患者の鑑別疾患として救急の場ではとくに重要である.

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