2010 年 19 巻 4 号 p. 593-597
血管型ベーチェットによる胸腹部大動脈瘤は稀であり,また,血管外科手術後には吻合部仮性瘤の発生がしばしば問題となる.症例は35歳男性.繰り返す胸背部痛を主訴に来院.胸腹部CT検査にて胸部下行および上腸間膜動脈近傍にsaccular typeの動脈瘤が認められた.既往歴にて再発性口腔内潰瘍,座創様皮疹,静脈洞血栓症,ブドウ膜炎を認めたことから血管型ベーチェットと診断された.手術は部分体外循環下に胸腹部人工血管置換術を施行し,腹腔動脈,上腸管膜動脈,両側腎動脈の再建に加え,Adamkiewicz 動脈を含めた肋間動脈の再建を施行した.術後の経過は良好であり,また,術前後のステロイド内服による厳重な炎症コントロールを行っている.現在術後5年以上が経過しているが,吻合部仮性瘤の発生など明らかな異常は認められていない.ベーチェット病における胸腹部人工血管置換術後5年以上を経過した症例報告は稀であり報告した.