日本血管外科学会雑誌
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症例
右外腸骨静脈におけるprimary venous aneurysmに対する1手術例
高橋 章之西木 菜苗井上 知也渡辺 太治坂井 修中島 昌道
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2010 年 19 巻 6 号 p. 689-694

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抄録

症例は29歳女性.不妊の相談のために訪れた婦人科にて行った超音波検査で右卵巣の横に拍動性の嚢状腫瘤が認められたために当科紹介となった.超音波検査では外腸骨静脈に壁在血栓を伴った3×4 cmの嚢状拡張を認めた.下肢静脈造影では腸骨静脈および下大静脈領域に有意な狭窄や閉塞は認めず,骨盤内および大腿・膝窩動脈領域の動脈造影でも異常な動静脈交通は認めなかったため,右外腸骨静脈のprimary venous aneurysmと診断し手術を行った.外腸骨静脈を縦切開し,静脈瘤内にある壁在血栓を摘除して嚢状瘤の部分のみを切除し,外腸骨静脈欠損部は大伏在静脈でパッチ閉鎖した.摘出した静脈瘤壁は健常組織に比べて菲薄化していた.術後半年はワーファリン,その後1年はアスピリンによる抗凝固療法を行い,術後2年半以上が経過しているが瘤再発や外腸骨静脈の血栓形成・狭窄は認めていない.腸骨静脈領域のprimary venous aneurysmは稀な疾患であり,破裂や塞栓症の危険性があることから手術適応と判断される.

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