日本血管外科学会雑誌
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Print ISSN : 0918-6778
症例
Stanford A型急性大動脈解離手術における外膜内翻法による断端形成の初期成績
栗山 充仁田邊 敦喜岡 幸央
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2011 年 20 巻 1 号 p. 43-46

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抄録

当院では,急性大動脈解離の断端形成に解離腔にGRF glueを用いてきた.術中吻合部出血の問題は生じなかったが,術後遠隔期にformaldehydeが原因と思われる吻合部仮性瘤形成のため再手術を要した2例を経験した.仮性瘤形成を回避するために断端形成法を変更した.2006年1月から2008年6月までに16例の急性大動脈解離に対して断端形成にGRF glueを使用せずに外膜内翻法を導入した.Stanford type A型急性大動脈解離16例中,上行大動脈置換術7例の近位側・遠位側両断端,上行弓部大動脈置換術9例の近位側断端に外膜内翻法を施行した.両者の平均体外循環時間は188±19分と243±32分で,平均大動脈遮断時間は123±21分と143±26分であった.手術死亡は0例で,術中に吻合後の止血に難渋した症例はなく,2週間後の術後造影CT検査で,大動脈基部の解離腔開存および仮性瘤形成は認めなかった.最長3年の短期成績ではあるが,急性大動脈解離手術時で外膜内翻による断端処理法は吻合部からの出血を減少でき良好な成績であった.

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