2011 年 20 巻 3 号 p. 665-668
腹部大動脈瘤破裂に急性下肢動脈閉塞を合併した比較的稀な症例を経験し,modified controlled limb reperfusionで救命した.症例は61歳男性,突然の下腹部痛と左下肢のしびれで発症し救急搬送された.左下肢の動脈は触知不能であり,CTで腹部大動脈瘤破裂と左外腸骨動脈の閉塞がみられた.緊急腹部大動脈人工血管置換術を施行した.左総大腿動脈に人工血管左脚を吻合した後から血圧低下,wide QRSの徐脈となった.虚血再灌流障害と診断し人工血管左脚を遮断,左総大腿静脈を露出しmodified controlled limb reperfusionを施行した.約2 Lの灌流液で洗浄し,血流を再開した.MNMSの発症なく術後経過は良好で独歩退院した.腹部大動脈瘤破裂を機に下肢動脈閉塞を合併することは稀ではあるが,腹部大動脈人工血管置換術が先行されるため下肢の血流の再開は遅れることになる.この際にcontrolled limb reperfusionで虚血肢からの高カリウム血症,アシドーシスに対処し救命率の向上につながると考えられる.