日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
血管内治療を含む,これからの血管外科専門医資格と修練プログラム─慈恵医大での経験から─
石田 厚金岡 祐司大木 隆生
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 20 巻 6 号 p. 823-827

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抄録

【目的】血管外科専門医資格取得のため修練施設での症例数・症例内容は重要である.新たな教授を迎え,新しい血管内治療(EVT)を含む血管外科診療体制が始まった2006年以降,心臓血管外科専門医,ステントグラフト実施基準管理委員会の腹部大動脈・胸部大動脈ステントグラフト実施医または指導医の慈恵医大での取得状況を新たな診療体制を導入する以前の2005年と比較検討した.【対象と方法】2006年7月以降2009年12月までの合計2,465件の血管手術のうち,2007年658件,2008年834件,2009年720件の症例を,2005年の145件の症例と比較しながら,専門医資格で要求されている疾患基準にもとづき解析した.【結果】2005年の内訳は,腹部大動脈瘤(AAA)7例,末梢動脈閉塞症(PAD)11例であったのに対して,2009年の内訳は,AAA 236例(血管内治療206例,open surgery 30例),胸部大動脈瘤(TAA)79例,胸腹部大動脈瘤(TAAA)24例(TAA/TAAA:血管内治療82例,open surgery(含hybrid)21例),解離性大動脈瘤14例,PAD 106例EVT 35例,open surgery 35例,切断・他36例),内臓動脈瘤関連18例(EVT 12例,open surgery 6例),腎動脈狭窄症23例,頸動脈狭窄症30例(EVT 11例,頸動脈内膜剥離術 19例),その他190例で,血管外科のあらゆる領域の疾患に対し,固定型透視装置を備えた血管治療専用手術室(2室)を使用しEVTとopen surgeryを施行した.2007年から2009年までの過去3年間の手術症例2,212件中1,492件(67.5%)が心臓血管外科専門医認定症例だった.【結論・考察】EVTの導入により,動脈手術は飛躍的に伸び,大動脈手術は約50倍になった.今後の血管外科医の修練施設には,頸動脈や腎動脈を含む広い領域の血管疾患に対する知識を深めると同時にEVTとopen surgeryの両方をバランス良く,数多く提供できることが肝要である.

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