激しい腹痛を主訴に来院した37歳男性.31歳時より特発性血小板減少症,再生不良性貧血で免疫抑制療法施行されていた.36歳時に間欠性跛行にてCT施行,末梢動脈疾患を認めたが腹部大動脈は径22×23 mmで,血栓による壁不整を認めるのみであった.今回のCTで腹部大動脈44×47 mmと18カ月で24 mmの急速な拡大を認め,腹痛の原因が他にないことから腹部大動脈瘤切迫破裂の診断で緊急Y型人工血管置換術施行した.病理組織検査では活動性の炎症を疑う所見に乏しく動脈硬化性であり,動脈瘤の形成,拡大にはシクロスポリン,蛋白同化ステロイドが関与している可能性が示唆された.再生不良性貧血に対して免疫抑制剤投与中の若年患者における,急速に拡大し切迫破裂を呈した動脈硬化性腹部大動脈瘤を経験したので報告する.