連続3例の感染性胸腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を施行し良好な成績を得た.症例1は74歳男性.血液培養で黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性)検出.胸腹部大動脈瘤に対してリファンピシンに浸漬した分枝付き人工血管で置換術を施行.人工血管吻合部周囲に大網充填.術後約3年で肺炎のために死亡したが経過中人工血管感染などの問題は生じなかった.症例2は75歳女性.下部消化管内視鏡後に胸腹部大動脈瘤が出現.分枝付き人工血管により置換術施行.瘤壁から肺炎球菌検出.術前に感染を疑わなかったためリファンピシン浸漬は間に合わず,結腸手術後大網萎縮のため大網充填もできなかった.術後約5年,合併症なく生存中.症例3は75歳男性.急激に胸腹部大動脈瘤が拡大.血液培養でStaphylococcus capitis検出.症例1と同様の手術施行.術後約2年半,合併症なく生存中.感染性胸腹部大動脈瘤に対する治療戦略は,大動脈瘤に対する手術を低侵襲に確実に遂行し,感染を制御する方策を集学的に実行することである.