日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
重症虚血肢に対する足部バイパス後の皮膚還流圧変化に与える糖尿病および透析の影響
郡谷 篤史山岡 輝年岡留 淳川久保 英介久良木 亮一本間 健一岩佐 憲臣松本 拓也岡崎 仁前原 喜彦
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2012 年 21 巻 2 号 p. 91-95

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抄録

【目的】組織欠損を伴う重症虚血肢に対する足部バイパスにおいて,術前後の皮膚還流圧変化に与える糖尿病,透析の影響を評価する.【方法】対象は,皮膚還流圧を導入した平成19年11月以降に足部バイパスを受けた,潰瘍を伴う重症虚血肢24肢.皮膚還流圧(SPP)は手術前後に血行再建領域に加え,患側の非血行再建領域(例:足底動脈バイパス後の足背動脈領域)で測定した.患者背景により糖尿病合併群(DM),糖尿病,透析合併群(HD)と非合併群に分け,潰瘍および創傷治癒期間,バイパス開存,救肢およびSPP値について検討した.【結果】観察期間は平均7.3カ月(1~18カ月).血行再建は足背動脈15,足底動脈9肢.バイパスは23肢開存(グラフト修復3肢含む),潰瘍は全例治癒し,大切断なく全例救肢できた.患者背景はDM群9,HD群10と非合併群5例であった.潰瘍の治癒期間は非合併群1.2カ月に対し,DM群2.2カ月,HD群2.5カ月と延長する傾向をみとめた(p=NS).足部バイパス前後のSPP変化(術前SPP-術後SPP)は,血行再建領域はDM群+34.6 mmHg,HD群+25.3 mmHg,非合併群+53.6 mmHgであった.非血行再建領域は,DM群+30.9 mmHg,HD群+21.8 mmHg,非合併群+53.4 mmHgであった.DM群,HD群は非合併群と比較し,SPPの増加が少ない傾向にあった.【結論】組織欠損を伴う糖尿病や透析合併の重症虚血肢では,バイパス後も足部全体で,皮膚還流圧の改善が不十分であり,組織治癒が遷延する可能性が示唆された.

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