2012 年 21 巻 4 号 p. 615-618
89歳男性.脳梗塞の既往があり,肺炎を契機とした腎不全により透析導入となった.透析用カテーテルを挿入の既往のある右鼠径部に拍動性腫瘤の触知,皮膚の発赤を認め,感染性動脈瘤と診断した.手術は人工血管による閉鎖孔バイパス後,瘤の中枢,末梢側を縫合閉鎖し,鼠径部開放創は局所療法継続にて治癒した.血腫培養よりMRSAが検出された.術後7カ月目に右大腿中央部が突然腫張し,CTにて右浅大腿動脈瘤破裂と診断した.手術所見では浅大腿動脈の一部石灰化が軽度な部位が穿孔していた.閉鎖孔バイパスグラフトを膝上部で遮断し,瘤の中枢,末梢側を結紮,縫合閉鎖した.血腫から再度MRSAが検出された.本症例では感染性動脈瘤が異時性に発症し,内因性要因との関連が推察された.閉鎖孔経路によりグラフトは感染部位から十分に隔離され,本法のとくに重症鼠径部感染に対する有用性が示された.