日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
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原著
破裂性腹部大動脈瘤手術症例の検討:治療成績およびDPC導入に伴う医療経済面からみた問題点
新谷 英夫初岡 慎一近藤 晴彦
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2012 年 21 巻 5 号 p. 653-658

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抄録

要  旨:【目的】当院での破裂性腹部大動脈瘤(RAAA)の手術成績ならびに診断群分類包括評価(DPC)導入に伴う医療経済面からみた問題点を検討した.【方法】対象は,2007年3月から2010年4月に手術を施行した16例.合併症のなかった群(G群)9例と合併症を併発した群(B群)7例に分け,術前・術中因子の比較と術後経過の検討を行った.医療経済については,出来高算定とDPC算定による診療報酬を算出し,差額[DPC-出来高]を求め,両群で比較した.【結果】16例中,病院死亡3例,術後合併症併発7例で,死亡率18.8%,罹病率は43.8%であった.術前・術中因子はいずれも両群で差を認めなかった.人工呼吸管理日数,ICU滞在日数,在院日数はB群で有意に長かった.術後合併症は,B群において手術死亡を除く6例中5例に腎不全,4例に呼吸不全(肺炎3例,ARDS 1例),4例に臓器虚血(下肢重症阻血2例,腸管虚血2例)を認めた.下肢重症阻血例は下肢切断を要し,腸管虚血例ではいずれも外科的処置を施したが失った.Abdominal compartment syndromeを1例で合併し,減圧開腹の後,二期的閉腹を行い救命し得た.DPC算定,出来高算定ともB群で有意に高額であった.両群とも差額[DPC-出来高]はマイナス,すなわち減収となり,その程度はB群で有意に大きかった(p=0.04).【結論】当院でのRAAAに対する手術成績は,未だ満足いくものではなかった.術後の重症化や入院の長期化には,術前のショック,術中術後のLOSに起因する臓器不全,臓器虚血の合併が大きく関与し,これらへの対策が重要であることが再認識された.術後重症,長期化する確率の依然高いRAAAに対する手術治療では,DPC算定による診療報酬評価の妥当性について再考の余地があると考えられた.

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