2012 年 21 巻 5 号 p. 669-673
要 旨:炎症性腹部大動脈瘤に対し,外科的治療に難渋した2例について報告する.症例1は69歳男性,CT上マントルサインを有する径54 mmの腹部大動脈瘤を認めた.炎症による癒着のため,両側尿管狭窄による水腎症を併発しており,手術に先立って両側尿管ステント留置術を施行した.開腹時,後腹膜は著明に肥厚し,瘤壁と尿管,腸管などの動脈周囲組織とが強固に癒着していた.末梢側は剥離困難であると判断し閉腹,術後ステントグラフト治療を施行し,経過は良好である.症例2は69歳男性,CT上マントルサインを有する径70 mmの腹部大動脈瘤を認めた.開腹時,瘤壁は白色で光沢を有し,陶器のように硬化していた.十二指腸が瘤壁の右側に強固に癒着しており,瘤壁の一部をつける形で十二指腸を剥離し,人工血管置換を施行した.炎症性腹部大動脈瘤は,その癒着の程度や癒着部位により,症例に応じた治療方法の検討が重要であると考えられた.