日本血管外科学会雑誌
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Print ISSN : 0918-6778
症例
治療に難渋した小児期の外傷性膝窩動脈損傷の1治験例
千葉 清阿部 裕之北中 陽介幕内 晴朗
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2012 年 21 巻 6 号 p. 741-744

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抄録

要  旨:小児における末梢動脈の血流障害は,成長障害を予防することが重要である.今回われわれは治療に難渋した外傷性膝窩動脈損傷の1例を経験したので報告する.症例は10歳男児.空手の試合中に左膝裏を強打され,その3日後より左下肢間歇性跛行が出現し,当院紹介受診となった.下肢CT Angioで左膝窩動脈に50%の狭窄を認め,外来での薬物治療を開始した.1カ月後に安静時の疼痛としびれが出現し,足関節上腕血圧比で右下肢1.07,左下肢0.52と左右差が出現し,入院加療となった.血管造影検査では,同部位の完全閉塞を認め,経皮的血管拡張術を施行した.しかし症状は改善せず,超音波による血流評価では,同部位は血栓閉塞していたため,緊急血栓除去を施行したが,またもや症状は改善しなかった.最終的に健側の大伏在静脈にて,血管間置術を行った.症状は消失し,退院となった.小児期の外傷性膝窩動脈損傷は稀な症例であり,成長期を考慮した血行再建を行うことが肝要である.

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