2013 年 22 巻 1 号 p. 73-76
要 旨:症例は72歳男性.3カ月ほど前より持続する発熱あり,腰痛および左下肢痛も出現するようになったため近医受診した.炎症反応の高値およびCTから最大径40 mmの炎症性遺残坐骨動脈瘤血栓閉塞と診断された.下肢痛は下肢の血圧低下が少なく,安静時痛であることより虚血症状ではなく瘤による坐骨神経の直接圧迫が原因と考えられ,バイパス手術は行わず,瘤切除のみの方針とした.術中所見から,明らかな感染は疑われなかったが,炎症により坐骨神経に強固に癒着していたため,検体採取およびmass reductionのみで手術を終了とした.術中培養からは嫌気性のグラム陽性桿菌が検出され,病理では感染性動脈瘤に矛盾しない所見であった.術後は感染徴候なく経過し,腰痛および左下肢痛は著明に改善し7日目に退院となった.遺残坐骨動脈瘤に対する手術では,その解剖学的特性より坐骨神経の温存が重要であり,下肢痛を認める場合は虚血症状に加え,神経圧迫症状を充分に評価する必要がある.