2013 年 22 巻 3 号 p. 641-643
要 旨:上肢に発生する動脈瘤のほとんどが仮性動脈瘤であり,その成因としては外傷性が多いとされている.今回われわれは非外傷性の尺骨動脈仮性動脈瘤の2例を経験したので報告する.症例1は66歳,男性.右前腕部の腫瘤を自覚し,超音波検査で最大径40 mmの尺骨動脈瘤を認めた.手術は動脈瘤の切除を行い,術後に虚血症状の出現を認めなかった.症例2は53歳,女性.好酸球増多症を既往症とし,左前腕部腫瘤を主訴に当科を受診した.造影CT検査で最大径30 mmの尺骨動脈瘤と診断した.手術は動脈瘤切除術を施行し,病理組織学的検査よりangiolymphoid hyperplasia with eosinophiliaと診断した.術後に好酸球増多症は自然軽快した.上肢に発生する動脈瘤は稀であり,多くが外傷性の仮性動脈瘤である.治療としては動脈瘤切除が行われるが,症例に応じて血行再建術を考慮する必要がある.