2013 年 22 巻 3 号 p. 663-666
要 旨:症例は80歳男性,交通外傷により体幹を受傷し,近医へ緊急搬送された.造影CT検査にて,右の腸骨動脈閉塞と診断され受傷後4時間で当院へ紹介搬送された.全身麻酔による開腹手術はリスクが高いと判断し,受傷後5時間経過した時点で,局所麻酔下に大腿-大腿バイパス術を行った.受傷後6時間で右下肢への血流を再還流することができた.術後,再還流に伴う所見は重篤ではなく,合併症もなく良好な結果が得られた.腹部鈍的外傷後の総腸骨動脈閉塞は,稀ではあるが急性期に再還流できないと代謝性筋腎症候群や下肢切断となることもあり,考慮すべき疾患である.