2013 年 22 巻 3 号 p. 679-682
要 旨:人工血管置換術後中枢に出現した傍腎動脈腹部大動脈瘤を経験したので報告する.72歳男性.15年前に腎動脈下腹部大動脈瘤に対し後腹膜アプローチでY型人工血管置換術施行されたが,外来通院中に吻合部中枢の腹部大動脈が瘤化し径55 mmに達した.左腎動脈は瘤より分岐しており傍腎動脈腹部大動脈瘤であった.腹部正中切開,開腹経腹膜経路でアプローチし,腎動脈再建が必要であったため右腋窩動脈からの腎動脈灌流により腎保護を行った.Knitted Dacron graftに左腎動脈を直接吻合し,末梢は人工血管に吻合した.腎動脈再建中も灌流が行うことができ手術は滞りなく終了した.術後手術操作に伴う十二指腸イレウスを発症したが絶食による保存的加療にて軽快したため,術後37日目に退院した.傍腎動脈腹部大動脈瘤に対する腎動脈灌流による腎保護の有用性について文献的考察を加え報告する.