日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部内臓動脈解離—とくに孤立性上腸間膜動脈解離の治療戦略
佐戸川 弘之高瀬 信弥瀬戸 夕輝横山 斉後藤 満一木暮 道彦緑川 博文斎藤 富善前原 和平
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2013 年 22 巻 4 号 p. 695-701

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抄録

要  旨:【目的】大動脈解離を伴わない孤立性の腹部内臓動脈解離(VAD)は極めてまれで,そのほとんどが上腸間膜動脈(SMA)に生じ,病態は不明のことが多く治療法は確立されていない.そこで教室で経験したVADについて後ろ向きに検討した.【対象と方法】2005年から経験したVADについて,その形態と治療法と成績について検討した.【対象と方法】年齢は41~78(平均56.7)歳,男女比は12:2.全例SMA解離で,1例は脾動脈にも解離を認めた.Sakamotoらに準じた分類では,type VIの例に,急性期に腸管虚血を疑いステント挿入,血栓摘除兼内膜切除術を各1例に施行した.またtype IIの1例で,発症3カ月後瘤拡大のため瘤切除を施行した.他の11例では,保存的に治療し症状は改善した.遠隔期にSMAの径の拡大はみられず,解離の距離は38.0±15.1 mmから20.7±15.7 mmと有意に縮小した(p<0.001).形態上,SMAの解離腔および血栓の縮小に伴い,type II,type IVが多くなっていた.最長6年10カ月の追跡期間で,全例生存しており合併症は認められていない.【結語】内臓動脈解離のほとんどはSMA解離例であり,多くは保存的に治療可能であるが,病態によって侵襲的な治療を選択すべきである.造影CTは診断に有用であり,発症後は定期のフォローアップが重要である.

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