2013 年 22 巻 5 号 p. 849-851
要 旨:炎症性であるか感染性であるかの判断に難渋した胸腹部大動脈瘤の1手術例を経験した.患者は68歳男性.持続する高熱と血液検査上の炎症所見からCT検査が行われ,炎症性または感染性の胸腹部大動脈瘤と診断された.瘤はステロイドと抗生剤の投与にもかかわらず短期間で急速に拡大したため人工血管置換術を施行した.動脈壁は著明に肥厚しており,周囲組織との癒着は高度で,とくに中枢側は著明であったが,分枝再建を伴う人工血管置換術を行えた.瘤壁の病理組織学的検査では細菌感染を認めず,炎症細胞の浸潤を認めた.また瘤周囲の細菌培養は陰性であった.術中所見および培養結果から積極的に感染を示唆する所見は認められなかった.術後経過は概ね良好であり,術後第18日目に軽快退院となった.