日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
地域基幹病院における破裂性腹部大動脈瘤症例の検討
高山 豊赤繁 徹佐々木 和人川崎 普司阿部 秀樹吉見 富洋永井 秀雄
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2013 年 22 巻 5 号 p. 785-790

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抄録

要  旨:【目的】地方の地域基幹病院である茨城県立中央病院(以下当院)における破裂性腹部大動脈瘤(破裂性腸骨動脈瘤を含む,以下RAAA)の治療の現状を分析し,治療成績向上に有用な方策を考察する.【対象・方法】2007年7月より2012年9月までに当院にて手術を行ったRAAA 15例を対象とした.これらの症例を,前医よりRAAA,切迫破裂,あるいはこれらの疑いの診断を受けていた群(D群)と受けていない群(N群)に分け検討した.さらに,同一期間に当院を受診し,RAAAと診断されたが当院にて手術を行わなかった10例についても検討した.【結果】D群は5例(男:女= 4:1)で,年齢は70.1±12.4歳,N群は10例(同9:1)で,年齢は77.1±10.0歳であった.来院時収縮期血圧100 mmHg未満の症例はN群において有意に多かった.手術時間,出血量に群間の有意差はなかった.在院死亡は,D群0%,N群30%であり,生存退院患者の術後入院日数はN群で長い傾向にあった.RAAAと診断され,当院にて手術を行わなかった症例のうち2例は他院に転院搬送され手術が行われ,軽快退院した.非手術症例は8例(同4:4)で,全例死亡した.手術症例と比べ女性が多い傾向にあり,年齢は有意に高かった.非手術症例を含めた死亡率は44%であった.【結論】RAAAの手術症例では,来院前に他院で診断のついていた症例の治療成績は良好であった.RAAAの治療成績のさらなる改善には,来院時未診断例の成績向上が必要であり,迅速な診断とともに,地域基幹病院においては,常時緊急手術ができる体制の構築が課題であると考えられた.

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