2013 年 22 巻 5 号 p. 809-812
要 旨:近年,心臓血管外科手術後の非吻合部人工血管仮性瘤の発症は非常に稀である.今回われわれは,ベントール手術および部分弓部大動脈人工血管置換術後1年4カ月に,巨大非吻合部人工血管仮性瘤を発症した症例を経験した.症例は27歳男性.人工血管破裂部は,ヘマシールド4分枝人工血管の左側前面で,前回手術で何ら手を加えられていない部分であった.患者はマルファン症候群で漏斗胸を合併しており,破裂の原因として,人工血管と胸骨ワイヤーとの機械的摩擦が強く疑われた.このような症例においては,胸骨裏面との機械的接触を防止するために,厚手の人工心膜を用いた前縦隔の保護や,金属ワイヤーを用いない胸骨閉鎖法などが考慮されるべきである.また,長期にわたる定期的なCT検査によるフォローアップが必要である.