日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部ステント治療時代における人工血管置換術の必要性
仁科 健中塚 大介堀 裕貴五十嵐 仁安水 大介水野 明宏廣瀬 圭一金光 尚樹山中 一朗
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2013 年 22 巻 5 号 p. 791-796

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抄録

要  旨:【目的】腹部大動脈瘤に対するEVARの良好な成績が発表されているが,EVARが困難であるために開腹手術が必要なケースもみられている.開腹手術とEVARの症例の変動を含めた検討を行った.【対象・方法】2008年1月から2012年4月まで腎動脈下の腹部大動脈瘤383例,開腹人工血管置換術(OS群)は244例(待機手術197例・緊急手術47例)でEVAR(EV群)は139例 (待機手術133例・緊急手術6例)を対象とした.【結果】2008年から2011年の4年間におけるAAA症例総数は変化なく,OS群の症例数は減少し,逆にEV群は増加がみられた.しかし,2010年と2011年の2年間ではOS群とEV群ともに症例数は同程度で変化はなかった.待機症例の術前のリスクファクター数は,OS群2.0±1.0に対してEV群は2.2±1.0とEVに多い傾向にあったが,ASA classificationの比較では両群ともClass 3が最も多く有意差はなかった.待機症例のIFU適応外症例はOS群139例とEV群20例にみられたが,各因子における両群での有意差はみられなかった.術後の有害事象は,OS群15%に対してEV群13%と有意差はみられなかった.病院死亡率はOS群8例(3%)で,うち5例は緊急症例であった.EV群での病院死亡はなかった.【結語】腹部大動脈症例に対する治療法の第一選択としてEVARは有用である.しかし,緊急症例やIFU適応外症例に対して人工血管置換術は重要な選択肢である.

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