日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
当施設における腹部内臓動脈瘤(外傷性瘤・腎動脈瘤を除く)に対する治療戦略と成績
藤井 琢尾原 秀明田中 克典関本 康人大田原 正幸北川 雄光
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 22 巻 6 号 p. 876-880

詳細
抄録

要旨:【目的】腹部内臓動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,破裂した場合致死的となるため,安全かつ的確な治療法の選択が望まれる.当該病変の治療成績を報告する.【方法】1995 年10 月から2011 年9 月までに当施設で治療された37 例39 瘤を対象とした.腎動脈瘤,外傷性の仮性動脈瘤は対象外とした.男性25 例,女性12 例で,平均年齢は59.4 歳であった.【結果】瘤の占拠部位は脾動脈20 瘤,上腸間膜動脈4 瘤,膵十二指腸動脈4 瘤,肝動脈3 瘤,腹腔動脈3 瘤,胃十二指腸動脈3 瘤,腹腔・上腸間膜動脈共通幹奇形が2 瘤であり,瘤径は平均29.3±15.2 mm であった.31 例が無症候性で,破裂例は1 例であった.治療法の内訳は,血管内治療20 例(コイル塞栓術19 例,covered stent 留置術1 例),外科的手術が16 例(脾摘術4 例,瘤切除術2 例,瘤縫縮術1 例,瘤切除術+血行再建術9 例),ハイブリッド手術1 例(コイル塞栓術+血行再建術)であった.周術期に重篤な合併症や死亡例はなかった.経過観察期間中に瘤の再発や拡大などは認めていない.動脈瘤の成因としては粥状動脈硬化症以外にfibromuscular dysplasia が1 例,segmental arterial mediolysis が3 例であった.【考察】今回良好な治療成績を得たことから,腹部内臓動脈瘤に対して,低侵襲な血管内治療を第一選択とし,再建の必要性に応じて開腹手術を考慮することは妥当であると考えられた.デバイスの進歩にともない,さらなる血管内治療の適応拡大が期待されるが,臓器血流温存を考慮した適切な治療方針の決定が必須である.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top