日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
急性胸部大動脈症候群に対する緊急ステントグラフト留置術
森下 清文楢山 耕平柴田 豪佐賀 俊文氏平 功祐馬場 俊雄馬渡 徹
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2013 年 22 巻 6 号 p. 881-885

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抄録

要旨:【目的】急性胸部大動脈症候群に対する従来の治療成績は不良なためステントグラフト留置術への期待が高い.当施設における治療成績を報告する.【方法】2007 年12 月から2013 年3 月までに急性胸部大動脈症候群に対しステントグラフト留置術を行った25 例を対象とした.内訳は胸部大動脈瘤破裂が15 例,外傷性胸部大動脈損傷が7 例,胸部下行大動脈人工血管置換術後の吻合部仮性瘤破裂が2 例,特発性胸部大動脈破裂が1 例であった.アメリカ麻酔学会における術前状態分類は3±0.7 で,手術入室時ショック状態であった患者は5例であった.手術は全例に胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を行った.【 結果】術後30 日死亡を4 例(16%)に認めた.1 例は術中再破裂し台上死した.残り3 例は多臓器不全で死亡した.術後合併症は呼吸不全が12 例(48%),脳梗塞が3 例(12%),腎不全が2 例(8%)であった.ステントグラフトに関連する合併症は挿入部位の動脈損傷3 例,エンドリーク3 例,graft migration 1 例であった.再TEVAR 手術を2 例に施行した.技術的成功は21 例(84%)で術後3 カ月目における臨床的成功は18 例(72%)であった.遠隔死亡を5 例に認め,瘤関連死亡を2 例含んだ.術後1 年目の生存率は61±11%,術後3 年目の生存率は54±12%であった.【結論】急性胸部大動脈症候群に対するステントグラフト留置術の早期成績は術前状態を考慮すると良好であった.ただし適切なサイズのステントグラフトを必ずしも使用できなかったことからエンドリークなどの遠隔期合併症に注意する必要がある.

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