2013 年 22 巻 6 号 p. 927-930
要旨:症例は59 歳の男性.両側腸骨動脈閉塞に対してDacron 製グラフトによる腹部-両大腿動脈Y グラフトバイパス術を施行した.術後8 年目に左鼠径部の吻合部仮性瘤破裂のため,修復術を施行したが,術後人工血管感染をきたした.バイパス左脚の中枢吻合部を残して摘出し,EPTFE グラフトを用いて浅大腿動脈へ閉鎖孔バイパスを施行した.感染巣は治癒した.今回,術後2 年経過し,歩行中に突然に左大腿内側部痛が出現した.同部位に拍動性の腫瘤を触知し,人工血管の非吻合部断裂を認め,緊急手術を行った.EPTFE グラフトが完全に断裂し仮性瘤を形成していた.断裂した人工血管を切除し,同じEPTFE グラフトにてinterpose して,部分置換した.EPTFE グラフトの完全断裂はまれで,原因はグラフトの構造上の特殊性に股関節屈曲時のグラフトへの過伸展,解剖学上大腿内側部が外力を受けやすいことが相乗効果となったものと推測される.