2014 年 23 巻 4 号 p. 774-777
要旨:症例は,71 歳,男性.腰背部痛を主訴に近医を受診し,腹部CT 検査で腎動脈下腹部大動脈周囲に血腫を伴う直径65 mm の腹部大動脈瘤を指摘され,手術目的に転院となった.搬入時,すでに出血性ショックを発症しており,ただちに手術室搬送となった.全身麻酔下,仰臥位で手術を開始した.第5肋間で左前側方開胸を行い,ターニケットを用いた胸部下行大動脈の部分遮断を行いつつ腹部正中切開を施行,人工血管置換術(I-grafting)を行った.後腹膜腔の血腫,腸管や腸間膜の高度浮腫,多量の腸管ガスのため閉腹は困難であり,エスマルヒ駆血帯を縫着し,仮閉腹を行い手術を終了した.術翌日に,経肛門的にイレウス管を挿入し,腸管内容を減少させることにより閉腹可能となった.腹部大動脈瘤破裂後の腹部コンパートメント症候群の発症が危惧される症例に対しては,二期的閉腹を行うことは有用である.