日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
術前ショックを呈した腹部大動脈瘤下大静脈穿破の1 救命例
駒津 和宜坂口 昌幸三浦 健太郎濱 元拓田中 啓之
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2014 年 23 巻 4 号 p. 796-799

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抄録

要旨:症例は78 歳女性.腰背部痛,呼吸困難,失神を主訴に他院受診し当院紹介.造影CT で最大径80 mm の腹部大動脈瘤,50 mm の両側総腸骨動脈瘤,30 mm の両側内腸骨動脈瘤を認めた.腹部大動脈分岐部直上で下大静脈との交通を認め,静脈系は拡張し,造影早期で静脈系が濃染された.ショック状態であり直ちに緊急手術を施行した.腹部大動脈分岐部直上の腹部大動脈瘤は下大静脈に3 cm の大きさで穿破していた.下大静脈中枢側の用手的圧迫と両側大腿静脈遮断による出血コントロール下,穿破部位を瘤壁側より縫合閉鎖した.Y 字型人工血管で大動脈-両側大腿動脈バイパス術を行い両側総腸骨動脈瘤および内腸骨動脈瘤を切開し断端を縫合閉鎖した.術後は直腸S 状結腸の虚血性腸炎のため長期絶食を要した以外は順調で,独歩退院された.穿破部が大きく急激な左-右シャントが生じたため重篤なショックをきたした,腹部大動脈瘤下大静脈穿破の1 救命例を経験した.

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