日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
破裂性腹部大動脈瘤における,発症-来院時間と成績
古屋 隆俊加賀谷 英生
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 23 巻 4 号 p. 759-765

詳細
抄録

要旨:【目的】破裂性腹部大動脈瘤・腸骨動脈瘤(ruptured abdominal aortic aneurysm; RAAA)の多くは自宅で亡くなり,重症例ほど専門施設へ搬送されない.今回は患者要因である「発症-来院時間」と成績を検討する.【対象】過去20 年間,当院のRAAA 手術137 例中,Fitzgerald 1 型(F-1=10),一次性大動脈消化管瘻,試験開腹を除くF-2 以上の122 例.【方法】(1)発症-来院時間の分布を来院時診断の有無,80 歳以上と未満,ショックの有無で検討.(2)発症-来院時間δ180 分をA 群(49 例:F-2=7,F-3=37,F-4=5),>180分をB 群(73 例:F-2=10,F-3=47,F-4=16)として術前,術中,術後データを検討.【結果】(1)発症-来院時間の分布は3 時間を境に傾向の差がみられた.(2)A 群は有意に高齢(76.2 歳 vs 72.8 歳)で,ショック例(89.8% vs 75.3%)や未診断例(69.4% vs 37.0%)が多く,状態悪化例(18.4% vs 8.2%)が多い傾向にあった.執刀-遮断時間(14.2 分 vs 20.1 分)に有意差(p=0.035)はあるが,来院-執刀時間,Ao 遮断時間,手術時間,出血量,輸血量は同等であった.ICU 退出時期や,歩行食事開始,入院日数に差はないが死亡率(34.7% vs 17.8%:p=0.034)は有意にA 群で不良であった.【結語】発症-来院時間が短いA 群は高齢でショック例が多く,周術期データは同等だが予後不良であった.発症後短時間で来院する症例に重症例が含まれている可能性がある.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
次の記事
feedback
Top